ぷもも園

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ガバの木と海のあるまちで (第7回・現たゃマックJKと邂逅)

 現を乗せた自転車は街へと続く緩やかな坂道を下っていく。夏の遅い夕暮れが迫り、斜陽に照らされた沖合の海は小麦色に輝いている。夕凪を破るように、時折涼やかな潮風が吹き付けてくる。しかし今の現は何事も美しいと思えない。ただそこにあるのは光を反射する水、気温10何度かの気流であって、感傷を誘うものではないのだ。そんなことを考えながら、あたりを見るともうそこは街のはずれだった。今やすっかりホモタウンと化したこの街も、かつてははれっきとした宿場町だったのだ。その面影は街の一角に軒を連ねる古い日本建築だとか、海辺に設けられた関所の跡くらいにしか残っていない。明治時代にこの街を訪れた文豪・M氏は紀行文の中で「なんていやらしい街なのだ」と率直な感想を綴っている。それから百年以上の時を経た現在の卑俗さは言うまでもなかろう。

 

 虚ろな現の眼にマクドナルドの看板が映る。夜マックとは随分な戦略ではあるまいか。ポテナゲ大(ナゲット2箱にポテトL)が500円とはこんな魅力的なファストフードが他にありますかいな。おまけに夜マックにはバーガーパティ倍サービスというのもあって、ビッグマックやペロペロダブチ・・・などはパティが4枚になるからお得だ。現は最初、駅前の焼肉ぷもも苑で食べようかと思った。ここは銘柄豚・島田豚や牛。の焼肉が名物なのはもちろん、海が近いこともあって、イカキムチや特製シーチキンサラダなどの魚介系サイドメニューも充実している、地元では知らない者のいない名店だ。けれども金曜のぷもも苑は混んでいる。会社の宴会が開かれるのだ。その様子は魑魅魍魎百鬼夜行酒池肉林阿鼻叫喚で中にはトイレに引き摺り込まれてフェラさせられてバックも掘られて薔薇族を読むようになり、最終的には大阪の方に何回か遊びに行くという本格派ゲイに仕立て上げられるとの噂もまことしやかに囁かれていた。現はそういうところには出向きたく無いと思う。サムソン男優の中でも比較的良識派な彼は、不正や横暴に対してはあくまで、恥ずかしく無いのかよ?と批判的である。

 

 現は自転車をいい加減に駐輪場に放り出し、そそくさと店内へ向かう。この店は郊外ということもあって一階建で、敷地も随分広い。小高い丘の麓にあって、窓際からは日本海がよく見える。土日になると併設された遊び場が賑わうが、金曜の夜は静かである。ドライブスルーには車がずらりと並んでいるが、その割に店内は閑散としている。

ビッグマック倍にポテナゲ大、それからコカコーラゼロLと水もお願いします。」

コカコーラゼロと水。これがファストフードを食する時の現の流儀だ。コカコーラをゼロにしたところで総カロリーに大差がないのは火を見るよりも明らかなのだが、現はこれで少し痩せた気になる。それは一種の精神的な罪滅ぼしであって、実際のカロリー云々は一向に構わないのだ。無料の水を飲むのは現的には脂モノには氷水が美味しいからであり、取り立てて深い理由などはない。

 

 1000円オーバーの会計を支払い、注文の品を受け取ってどっかりと窓際の席に腰を下ろす現。フラストレーションをぶちまけながらの豪快な食事風景ははたから見るものには圧巻だ。右手にハンバーガー、左手にポテトを交互に貪る。彼の顔と並ぶと小さく見えるビッグマックにかじりつき、ポテトを四、五本をまとめて放り込む。ポテトを持っていた手はおもむろにナゲットの箱に伸びて、バーベキューソースにたっぷりと浸った揚げたてを頬張る。喉を鳴らしながら氷で冷えたコーラを流し込むと、現の左手は再びポテトへと向かう。

「あーサイコサイコ・・・」

食事をしながら思わずその口角には笑みが浮かぶ。現が心に抱えていた嫌なことも気がかりなことも、何もかも全て流れていく。窓に目をやる。夏の太陽もとうに水平線の向こうに沈み、夜の帳の降りた日本海は漆を流したかのように黒く、静かだ。その闇の中に漁船が一艘、二艘、白熱電球を煌々と照らして波間に揺蕩っている。食事を終えて幸福感に浸っている現は思う。ああなんと世界は美しいことだろう!

 

 現の後ろの方には3人組の女子高生が喋っている。この街唯一の高校である、商業高校の生徒だろう。

「あの新作MAD見たー?」

金髪の一人が口を開く。

「見た見たーなんかおっさんなんとかみたいなやつっしょ」

「あーあれかー、現ちゃんとガバちゃん出てたね」

一人は茶髪それからもう一人は短髪でメガネを掛けた大人しそうな雰囲気で、他の二人とは雰囲気を異にしている

「そそそ、ところでガバ現ってどう思う?」と金髪姉貴

「うちは全然ありかな。現ちゃんとガバちゃんってなんかキャラ違うって言うかさ、それが逆に被ってなくていいと思うんだ。」

「えーでもやっぱりうち的にはタチ現としまじろうが王道なんじゃないかなって、思うんよね〜」

茶髪姉貴はこう言ってから少し恥ずかしいのを隠すように手元のケータイに視線を落とした。

 「お前頭固いんだよ!っwwww」と金髪姉貴からツッコミが入る

「まーあれだねー貫地町はどっちでも良いと思うけど、カプとかにはそんなにこだわらんねー」

貫地町とはなんだろうか?この物語を読む読者には地名のように思われるかもしれないがさにあらず、この街では島田家と双璧を成す名門・貫地町家のことである。島田家は名門の割に口先ばかりで無能、指示厨、インポディアルガの部長などなど世間での評判は芳しくないが、貫地町家は乳首モロ感だが根は真面目な部長が多いとの評判である。この金髪女子高生・貫地町公望(17)もその華麗なる一族の一人である。

 

「そういえば緩次郎×コブラ三木谷派もいるよね」

短ちゃんが切り出す

「コブガバはなまら草。そもそもコブラは絡みの相手が多すぎるから成立してない…してなくない?」

「まぁあれだょ、うち的には太めの二人のファックが見たかったからやっぱ王道を征くのはしまじろうかな。」

コブラアンチって多いのかな」

「まぁ多いんじゃね?ホラなんか途中から参戦してくるの嫌いとか吐息がうるさいとかいろいろ叩かれてるしさ」

「私はさぁこう思うんだよね」

短はすこしの沈黙を挟んでこう言った

「百合に参戦してくる男役を叩いてるような連中はコブラ三木谷アンチだって」

聞いた二人の笑いが渦の環のように広がる

「あ、そこそうですね」

「真理すぎておっp…おっぱげた!」

 

 

「(最近の若者の会話レベルは)すごいなぁ」

現は小声でこう呟いた。

 

「話変わるけどさ」

コーヒーを飲み干して貫地町が口を開く

「現ってなんかキモくない?」

 

「おっほっほーおーほほ!?」

超展開に興奮を隠しきれない現ちゃんは思わず雄叫びを上げてしまう。けれども三人は自分達の会話に没入し、気づいていないようだ。

「わかるーなんかこないだプロフィールみたらさ相手が女でも男でもいじめられるのが大好きって書いてあってマジ引いたわwwwwお前バイだったのかよぉ!?」

「そんなドMの癖に名前が少しM氏ってホントなんなんですかね…」

「浅草ぶってぶって音頭もなんかやじゃない?

「あの辺全体的に嫌い。自分がかわいいと思ってやってそう」

「私は変にマセてないだけ課長のほうがまだ可愛げがあると思う」

 

少しどころじゃなくM氏の現ちゃんはこんな会話を聞きながら「いいわいいわ…」と恍惚的な表情を浮かべていた。現はいじめられるのが大好きなのだ。DISったつもりでいても受けとる現にしてみればそれはご褒美でしかない。ただでさえ満足のいく食事を終えてハイになってる現ちゃんは堪らず

 

「(精神的に)ぶってぶってもっとぶって」

 

と三人に懇願してしまう。想像を上回る変態ぶりに固まる三人。

「なんかさぁカラオケでもいかね、このオッサン面倒だし」

「いいわいいわもっと頂戴そういうの!!」

現ちゃん的には短ちゃんがタイプだったので声をかけようとしたが

「うわきっしょうちの短ちゃんに触ろうとすんなってこの毛デブ犯罪者じゃん」茶髪姉貴に阻止されあえなく引き下がる現。

 

そそくさと店を後にした三人に変わって店の奥から道化師が現れた。どうも現の愚行を嗅ぎ付けたらしい。

「ドナルドとお話ししようよ」

笑顔を浮かべるドナルドの目は少しも笑っていない。ゆるして亭ゆるしてくらいじゃとても許してくれなそうだ。現ちゃん大ピンチ!!

 

次回

現場監督vsドナルド