ぷもも園

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ガバの木と海のあるまちで (第8回・激闘!ドナルドvs現様)

 向かい合い合ったドナルドと現の間には重苦しい沈黙が流れ、無言の睨み合いが続いた。オワコンピエロとはいえ、流石に一時代を築いただけあって、漂わせる風格は十分である。このまま戦いになったとしたら・・・現は強敵との死闘を脳裏に描いた。まずこちらは編隊「親父」を召喚し、ハンバーグラー紫芋みたいな眷属を召喚してくるであろうドナルド陣営に対して、物量的に負けない構えを作る。決定打を与えさせずに長期戦、そして最終的には得意の巨根肉弾戦に持ち込めば勝算は十分だ。なにせこちらは百戦錬磨の中年親父たちである。問題はドナルドのスキル「ドナルドマジック」と「らんらんるー」をどのように対処するかだ。いくらタフな耐久性に定評のあるチーム現といえども、これだけ太い攻撃が入ったら壊れちゃうゲージ壊れちゃう。切り札としてF.C.O.Hを常に相手に見せ牽制しておく。問題はどのタイミングで決行するか。それがこの勝負の生命線だ・・・

 

 「公園でお話ししようよ」

沈黙を破ってドナルドが現に提案する。公園でお話しとはやはり一戦を交えるということだろう。覚悟を決めた現はドナルドと並んで店を出た。

 

 公園は海沿いにある。それは北国ながら珊瑚礁の広がる南の島のように白い砂浜と、青々とした葉を付けた赤松とのコントラストが美しい公園だ。海水浴場として解放されている浜辺には、ちょっとした食べ物を売るプレハブの店が幾軒か出て賑わいを見せるのが、この町の夏の風物詩でもある。外れにある岩場は、かの有名な生物学者・三木谷博士をして「生w態w系豊かですねこりゃぁ」と言わしめたほどで、様々な海の生物が姿を見せる。鯛^~や敏感ふとフグくんといった稀少な魚たちに加え、海中にはテラドンと呼ばれる伝説の未確認生物が生息するとの話だ。また、浜の500m沖合には、地元でomnk岩と呼ばれる観光スポットが存在する。その形が真に性器以外の何物でもないことからこう名付けられた奇岩は、10月の下旬の一時期にだけ穴の向こうに沈む夕陽が撮影できるとのことで、その時期には観光客や写真家が浜辺にずらりと並ぶ。

 

 そんな場所へ二人は今から決闘をしに行くのだ。午後七時。まだ宵の口だが、このあたりの海沿いはもう車すら滅多に通らない。そよそよと吹き付ける夜風は涼しく、辺りには秋の気配が漂っている。しかし二人の闘争心は風を受けてますます燃え盛る。海沿いを走る国道を横切り、堤防のすぐ近くまでやってきた。その向こうには満ちた潮が穏やかな規則的なメロディーのようにさざめいている。

 

「いってみよう!」

ドナルドの言葉を、現は一瞬、戦闘開始の合図と受け取った。しかしその声は不思議に軽快だ。よく見れば彼の指は彼方の灯を示している。その光は幾重にも木が茂った松林の向こうに海霧に包まれ、ぼんやりと浮かんでいた。波の音しか聞こえないことも相まってお伽話の世界のような、実に神秘的な光景だった。

「なんだよあれ・・・」

「とにかくいってみよう!」

 

二人は灯の許へとたどり着いた。彼方からは朧に揺めき、神秘的でさえ合ったそれは、着いてみればただの公衆便所だった。現は文字通りの幻滅を味わった。一体、真実を知るというのは幸福なことなのだろうか?Aだと思っていたものが実はBだった。そう知った人間は、現実の冷酷さを身にしみて味わうとともに、Aだと信じて疑わなかった己の愚かさを恥じ、いたたまれなくなる。このことを高遠にして緻密な哲学・芸術体系へと昇華させたのが小梅太夫だ。彼は人間の幻滅を凝視し、独特の哀調で表現し続けた。幻滅を味合わずに済むための方法は二つある。一つはあるものに対する美化した幻想を抱かないことであり、もう一つは幻想を抱きながらその実像を知らないように努めることである。しかし、そんなことが人間に可能なのだろうか。前者を推し進めたら、人の一生はいかほど味気ないものになってしまうことだろう。それは言ってみれば精神の砂漠である。そこには木々も花も生物も希薄だ。精神の砂漠には太陽は昇らず、月も星も見えない。ただ砂や岩石のような無機質の現実があるだけだ。では後者はどうだろうか?彼は誂えた美しい幻想を真実によって壊されることを恐れるだろう。そうして真実との邂逅を避け続ける。彼はあたかも罪を犯しながら逃げ続ける罪人である。いつどこで出くわすかもしれない真実という名の刑吏に絶えず怯えなくてはならないだろう。そうすると結局、我々は分かっていながら幻滅を繰り返すより法がない。「チクショー」それは幻滅の輪廻から解脱することのできない哀れな人間存在の、魂の叫びなのだ。

 

ここはホモタウン、その公園にある公衆トイレ。当然何も起きないはずがなく・・・無論ハッテン場として有名な所だった。

「ドナルドはもちろん君のことも知ってるよ。カリスマ男優の現場監督さんだよね。今日は会えて嬉しいなぁ」

「恥ずかし///」

唐突のファンとの邂逅に喜びを隠せない現ちゃん

「ドナルドは今、男子に夢中なんだ」

「凄いなぁ・・・」

「だからここで一緒にお話し(意味深)しようよ」

「(下心が)見える見える」

現は若い頃に一度だけハッテン場に行ったことがある。彼がこの街から東京に出て間もない頃だった。都内某所のハッテン場に興味本位で行ったのは良かったが、初心者であるのをいいことに、そこにいるホモたちの慰みものにされてしまった。夜が明けるまで文字通り足腰立たなくなるまで回された現は、ハッテン場などもうこりごりと思い、それ以来現はその手の特殊な街角に足を踏み入れることを憚っていたのだ。しかしドナルドは一体なぜ現とのハッテンを求めるのか。彼はドナルドにその訳を訊ねた。

「どうしてって・・・」

道化師は静かに語った。彼は日々ドナルドマジックなどのテクニックの鍛錬に力を入れているが、実戦で試す機会がなかった。そこで今日はプロである現場監督の指導を受けたいとのことだった。


「もっとぶっといの入れてんじゃないの?(余罪の追及)」

「うーん・・・ハンバーガーが4個分くらいかな」

「お太い!」

「もちろんさ。ドナルドマジックもやっちゃうよ」

「すごいなぁ」

全てを受け入れた現はついにトイレの中へとドナルドを導く

「ホラ、変態親父行くぞ。」

「ドナルドです(訂正)」

二人の男の姿がトイレの入り口に吸い込まれ、消えていった。

 

 

さてここから繰り広げられた交合のあまりの生々しさに、私は筆を置かねばならない。

 

 ドナルドのテクニックは現の想像をはるかに上回っていた。現は最初、いつからこんなテクニシャンだったんだ・・・と驚いていたが、そんな余裕があったのも束の間、「これか」「これか〜?」「こっちの方がいいかな」と次々と繰り出される技に頭が真っ白になった。奥義ドナルドマジックに現はなすすべも無く壊れていく。道化師の脳天を突き上げるファックに現のボキャ貧は加速し、ただうわごとのように「いいわいいわ」を連発するだけになった。意識が朦朧とし、世界がぐるぐると渦を巻いているような錯覚に陥る。「ランランルー」とともに果てたドナルドから解放された現はドタリと床に倒れ込んだ。

「今日はありがとう。また今度お話ししたいなー」

そして長時間のプレイにもかかわらず疲れひとつ見せないドナルドは、軽やかな足取りで帰路についた。

 

公衆便所に残ったのは捨てられた現の姿だった。虚ろな目を床に移す。灯にやって来た蛾が一匹、白い腹を見せて死んでいる。蛍光灯が切れかかっているのだろう、チカチカとしていて端がオレンジがかっている。波の音は相変わらず高い。現はようやく起き上がる。ドアに手をかけた瞬間、彼はある違和感に気がついた。

 

「ダメ、ズボン無い・・・(新事実)」

しかし、無いのはズボンだけではなかった。彼が下半身に身につけていたもの全て、つまり靴や靴下、パンツまでが無いのだった。恐る恐る扉を開けて外を見る。そこには誰もいない。砂の上に靴が片方だけ投げ出されていた。先には片割れがやはり砂に半分めり込むような形で放り出されている。しかしそのほかの身に付けていたものはまるで見当たらない。

 

 いくら夜陰に乗じようと、下半身を露出したままでは家までは辿り着けないだろう。財布も携帯も全てはズボンのポケットの中だった。無論これらも見つからない。こうなってしまうともはや助けを呼ぶことも不可能だ。


「嗚呼、駄目駄目駄目」


先程まで嬌声に充たされていた空間に現の力ない嘆きが響き渡った。