ぷもも園

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ガバの木と海のある街で(連載第三回)

 私はそばにいる祖父の方を見た。この時77歳だった祖父は無聊を託ち、テレビばかり見ていた。その画面にはありふれたアニメの映像が映し出されている。私はこんなお爺さんになっても子供が見るようなアニメが面白いんだろうかと怪訝に思った。そしてその様子からは私が見たものを彼は見ていないことが伺われた。私は思い切って祖父に見たかどうかを聞こうかとも思った。しかし気が進まなかったのでやめにした。そうこうしているうちに次のアニメが始まった。この頃の日曜の午後はよく子供向けのテレビアニメを放送していた。ただ私にはどうも面白いと思われるものが無くほとんど見ることはなかったが。始まったアニメのオープニングの汚さに私は目を疑った。

「老人戦士セーラーむうぅぅぅぅぅん(男泣き)」(注1

さっき起きた出来事よりも、今見ている映像の方が私には何倍も衝撃的なものであった。そこに出てきたのは何故か半裸の眼鏡を掛けた老人。相当に痴呆が進んでいるのだろう、訳の分からないことを言っている。私はふとこの老人が祖父にそっくりであることに気がついた。もしかすると祖父は自分に似ている人が出ているからこのアニメを見ているのかもしれないと思った。そんなことを考えているうちに私の耳に次のようなOPテーマの歌詞が飛び込んできた。

「ハートはグチュグチュで吸い付いちゃってる・・・」

ハートにそんな機能ねぇよ!

 

そのアニメは30分ほどで終わった。内容は大して面白く無く、むしろ不快なものであった。何しろそこに出てくるヒロインと思しき謎の老人が不気味すぎる。それにもう一人のヒロインと思われる老人も嫌に気味の悪い顔の造りをしていた。その後、小学校に上がった時に読まされた「羅生門」の挿絵にちょうど似たような顔をした老人が載っていて「あっこれかぁ!」と思ったことがある。そしてさらに後になってからこのアニメを見たという人に会ったことがある。この二人目のヒロインは、その人の友達の間では「羅生門で死体食ってるババァ」と呼ばれていたらしい。(髪を抜いてただけで死体は食ってないだろ!いい加減にしろ!)

 

 しかし人間は気持ち悪いものに惹かれるのかもしれない。私はこのアニメの持つ魔力の虜になってしまった。何も良いところがあるとは思えないこのアニメを私は毎週見るようになった。一話をあれだけ熱心に見ていた祖父はすぐに飽きてしまったようだったが。私はそれからというものアニメの魅力に目覚め。いろいろな作品を見るようになった。そんな日々のうちに私は我馬を見たことをすっかり忘れていたのである。あの夏の終わりに突然の邂逅を果たすまでは。

 

注1 OPはこちらから(閲覧注意)。MADだからと言って生半可な覚悟で見てはいけない(戒め)。登場人物のそもそもの汚さに加えてほんへを存分に使用しているため初心者はもちろんのこと、ハードな内容のほんへやMADですらも笑ってきた歴戦の猛者たちですら「いやぁ〜きついっす(素)」と拒否反応を示すレベル。そもそものビデオはどの層に需要があるんですかね(困惑)。